ルルーシュ、誕生日おめでとう!!
・・・ということで、幼少期編でお祝いです。
(以下、あとがき)
実はスザクも、前の日にナナリーにプレゼントの相談をされて初めて思い出してたりします(笑)
「ぅへっ!?もう12月なのか!?」って思わず言って、そのあとめちゃくちゃ落ち込みました。
12月5日だってことは覚えてたのにっ!!的な。
ルルーシュが自分の部屋でパソコンで何かやってる間に、とりあえずリビングで2人いろいろ悩むんですが、思いつかない。
お財布はルルーシュが握っているし、料理はルルーシュしかできないし、何よりルルーシュの喜ぶものがわからない。(ちなみに去年は3人とも日付の感覚がなかった)
周囲に火の玉とばす勢いで落ち込むナナリーに焦ったスザクが、「あいつはナナリーがおめでとうって言うだけでも絶対喜ぶって!!」とかなんとか言ってどうにか励まして、何やらやり終えた感のルルーシュといっしょに夕食を食べ、そのまま夜に。
すぐに眠ったスザクですが、なんとなくプレゼントのことが気になって凄まじく早く起きてしまいました。
で、いろいろ考えているうちに泣いてしまいます・・・。
ルルーシュがあったかくって、生きてて。スザクにとって嘘をつくってことは、やっぱりどうしても慣れないことなんだけれども、嘘をつきつづけるからこそ、その決意をしたからこそ、守れるものがあって。それが3人での生活で、自分たちの命で。
一緒にいられることが奇跡みたいに感じられて、うれしくて、思わず泣いちゃった★
そこから今回のSSがスタートです。(長い)
(/ここまで)
―――っ。
――――ひっく・・・ふっ―――
泣き声・・・・?
誰?
誰が泣いている・・・?
苦しい。
息ができない・・・!
**********
鼻をすする音と息苦しさで目を覚ましたルルーシュは、全く身動きが取れない状態だった。
体には、まるで蛇のように誰かの手足がからみつき、顔は誰かの胸に押しつけられている。
もっとも、「誰か」とは言っても、このようなことをする人間の心当たりはルルーシュには一人しかないが。
どうにかして震える拘束を解こうともがいているのにやっと気づいたのか、そっと腕がとかれ、ルルーシュは大きく息を吸い込んだ。
―――っ・・・はぁ。
ゆるやかに顔をあげると、そこには泣き腫らしたスザクの顔があった。
「おはよう。スザク」
どうしたんだ、と聞くより先に、そっと頭をなでる。
もそもそと動き、目からシーツへとまっすぐ続いている涙の跡に唇をあて、そっと舌でぬぐうと、止まったはずの涙がまた溢れ出してきた。
そしてそのまま、またきつく抱き締められる。
痛いほどに強く背中を、そして右腕を抱え込むその手は震えていて、肩には濡れた感触。
かろうじて拘束を免れた左手で、ルルーシュはゆっくりとスザクの背中を叩いた。
―――トン・・・トン・・・トン・・・トン・・・
一定のリズムを刻むそれは、どこかで見たことのある光景のような気がして、ルルーシュは目を閉じた。
―――あぁ。確か、母さんが泣きじゃくるナナリーに・・・―――
あの時、自分は確かナナリーを羨ましがっていたように思う。
母親に抱き締められるナナリーが羨ましくて、でも、そんな自分が嫌で必死に自分に言い聞かせていた。
ナナリーはまだ子供なんだから。僕はお兄さんなんだから。母上は僕のことも愛しているんだから。
幼かった、とルルーシュは思う。今もまだ幼いことは自覚しているが、あの頃は今よりずっと幼かった。
・・・もう、あの時間はかえってこない。
自分だけが取り残されたように感じたあの時でさえ、今思うと幸せだった。
じっと見つめる泣き出しそうな視線に気づいたマリアンヌが、次の瞬間には自分に向って微笑んで手招きしてくれるのを、心のどこかで知っていたのだから。
―――トン・・・トン・・・トン・・・トン・・・
寝起きの思考は、道に迷いやすい。
アリエスの穏やかなひと時の思い出は、いつのまにか元気なナナリーの姿になった。
ナナリーの眼が見えて、そしてこの光景を見たら何て思うんだろうな・・・。
僕みたいに、羨ましく思うのかな。
そして、自分に言い聞かせるんだ。
スザクさんはまだ子供なのですから。おにいさまは私のことも愛していらっしゃるのですから。
そこまで考えて、ルルーシュは笑った。
確かに、スザクは子供に違いない!なんといっても、まだ12歳なんだから。
クスクスと笑うルルーシュは、いつの間にか顔をあげたスザクに気づかなかった。
「・・・何、笑ってんだよ・・・」
目の周りを赤く腫らしたスザクは、どこかバツの悪そうな顔をしながらもルルーシュを睨みあげていた。
耳まで赤いそんな顔じゃ、全く怖くない。
なんでもないよ、とにっこり微笑みながら、ゆるくなった拘束からそっと抜け出し、ルルーシュは体を起こした。
「やっと起きたのか。おはよう、スザク」
「・・・ずっと、起きてた。」
目をこすりながら自分も起き上がったスザクは、いつもの彼からは想像できないぐらい小さな声で呟いた。
その様子を少し不思議に思ったルルーシュだったが、先ほどの涙の方が気になる。
「なんだ。悲しい夢でも見て、泣きながら眠っているのかと思っていたよ」
―――悲しい思いをしたなら、たとえそれが夢であっても話してほしい。ひょっとしたら、僕が助けになれるかもしれないだろう?―――
ルルーシュの言葉に、スザクはうつむいて首を横に振った。
「・・・違う。悲しかったんじゃない。嬉しかったんだ・・・!」
「えっ?」
「おめでとう、ルルーシュ・・・!誕生日、おめでとう!」
言うと同時に顔をあげたスザクは、輝いていた。
白い歯を見せてにっこりと笑い、そして細められた目からはまた涙が零れ落ちてくる。
カーテンのすきまから差し込む日の光を浴びて、まるであの夏の日のひまわりのようだった。
「俺たちは、嘘ばっかりだ。」
乱暴に涙を拭ったスザクが、まだ潤んでいる深緑の瞳でルルーシュをじっと見つめる。
ぽつりぽつりと紡がれる言葉はたどたどしくて、けれど心の奥にまで入り込んでくるようで―――
「親のことも、出会いも、関係も、全部嘘。名前だって嘘だ。」
―――でも、とスザクは続ける。
「これは、嘘じゃないんだよ。俺たちは、これだけは嘘じゃないんだよ。今日がお前の誕生日で、お前は今日12歳になって、ここにいて、俺はお前を祝ってるんだよ。嘘じゃない。嘘じゃないんだよ・・・!」
目の奥が熱い。
息がうまくできない。
泣き笑いの顔を見つめていたら、自分まで泣いてしまいそうで、ルルーシュは下を向いた。
その途端、目の前に影が落ち、上から覆いかぶさるように抱きすくめられる。
「ルルーシュ。これだけは嘘じゃないんだよ。俺たちは、生きてる。一緒にいる・・・!嘘ばっかりだけど、これだけは本当なんだよ。本当でもいいんだよ・・・!!」
もうダメだ。
ルルーシュは思った。
時計も見ていないけれど、きっともう、ナナリーも起きている時間だろう。いつまでも降りてこない僕たちを心配しているかもしれない。スザクが鼻声なのはもうどうしようもないとしても、僕まで鼻声だったら、絶対にひどく驚かせてしまう。でも、もうダメだ。
―――僕は、今日が何日かも忘れていたのに。もし知っていたとしても、誕生日だからといって喜んだりしなかった。生まれながらに死んでいると言われた僕に、誕生日なんて関係がない。・・・そう思っていた。
―――でも、「生きている」と。本当だと。
―――・・・スザク・・・っ・・・・―――
**********
うす暗い部屋の中、やわらかい光に照らされた、まだ幼い少年が2人。
栗毛の少年はしゃくりあげながら「おめでとう」を繰り返し、片割れを強く抱き締める。
決して離さないように。少しのすきまも残すまいとするかのように。
黒髪の少年は声をあげずにただ涙を流し、片割れにきつく縋りつく。
決して離れないように。少しのすきまも残らないほどに。
やがて2人は顔をあげ、照れくさそうに微笑みながら、互いに見つめあう。
先に常盤色の瞳の少年が口を開いた。
『Happy Birthday. Lelouch vi Britannia.』
一瞬、突然のブリタニア語に紫紺色の瞳を瞬かせた少年は、輝くような美しい笑顔で答えた。
「ありがとう。枢木スザク。」
そして2人はどちらからともなく手をつなぎ、妹の待つ食卓へと向かった。
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