ルルーシュはじっとスザクを見つめていた。
彼が本当に言いたいのは、ナナリーのことではないだろう。
・・・そう感じながらも、それが何なのかはわからなかった。
総司令部へ行くことに対する恐れか?
戦争に対する悲しみか?
ブリタニアに対する憎しみか?
・・・わからない。わからないよ、スザク・・・!
いつも自分の前を歩き、胸を張っていたスザク。
なぜ、こんなにも小さく見える?
赤い空の下。
夕日に照らされたスザクは、今にも消えてしまいそうに見えた。
**********
―――パチッパチッ、と。火の粉のはぜる音がする。
横たわる沈黙に気づいたルルーシュは、とりあえず先ほどの質問に答えようと、口を開いた。
「―――・・・。ナナリーは、アッシュフォードの使いのところにいる。」
「・・・珍しいな」
下を向いたままのスザクの思わぬ呟きに、ルルーシュはただ不思議そうな顔をした。その顔を見ることもなく、スザクは続けた。
「お前がナナリーと離れるなんて。」
いつものように馬鹿にした様子もなく、小さく言葉を落とすその姿に、ルルーシュはどうしようもなく違和感を覚えた。
コレハダレダ?
あんなにも強かった彼を、こんなにも弱々しくしたのは何だ?
あんなにも優しかった彼を、こんなにも傷つけたのは何だ?
彼から国を奪い、笑顔を奪ったのは何だ?
―――ブリタニア。
まだ、奪うのか。
母上を殺し、ナナリーから目と足を奪い、僕たちを捨て、今度はスザクから全てを奪った。
―――許さない。
僕の大切な人を傷つけ続ける国。
頭が割れそうに痛い。
これは、太陽か。それとも、炎か。
僕の眼の奥が、赤く赤く燃えていく。
憎い。
苦しい。
痛い。
悲しい。
悔しい・・・っ!
ルルーシュの頭の中で、何かが焼き切れる音がした。
―――絶対に許さない!
**********
赤い大地に、風が吹く。
何もなくなってしまったこの地を嘆くかのように。
沈みゆく夕日は子供たちを赤く染める。
自らの手のひらを見つめたまま、黙り込んだ少年と、彼を見つめたまま、強く手を握り締めた少年を。
聞こえるのは、風の嘆きと炎の叫び。
悲しみと痛みと恨みが、火の粉と共に、天に昇る音。
それ以外には、何も聞こえない。
・・・何も、聞こえない。
「―――スザク。僕は―――」
重たい空気を切り裂いたのは、少年の震える声。
紫紺の瞳を揺らしながら、彼は叫んだ。
「僕は、ブリタニアをぶっ壊す!!!」
―――それは、あまりにも強く、あまりにも悲しい誓いだった。
PR